『しんがり 山一證券最後の12人』清武英利著を読む
山一證券の自主廃業後、倒産までの経緯、原因を探り、精算業務を行う調査委員会の活動を追求するドキュメント。
社会や人々に大きなインパクトを与えた山一證券の自主廃業ですが、その実情を知っている人はあまりいないのでしょうか。
「飛ばし」「損失補てん」「債務隠し」と言われる、証券法に違反する違法な行為が、山一證券のなんとトップで行われていたという衝撃の事実が明らかになっています。
かつては「日本最大」、廃業時も「四大証券の1つ」と言われた会社が、こういったことをやっていたということに驚きます。
悪質な違法行為が当局に咎められ、会社更生法ではなく自主廃業に至るわけですが、違法行為と知りながら、何人もの人が違法行為に手をそめていくのです。
エラい人から違法行為の指示を受けた時、自分はどうするのか、ということを否応なく考えさせられます。サラリーマンの因果と言えばそうですが、特に大企業でなかなか転職が難しい40歳以上になれば、そうなったときにどうするか、あらかじめ考えておくべきでしょう。
大きな会社の売上、利益の大幅減やマイナス決算は、社会に大きな影響を与え、自らも大きなダメージになります。しかし、一時逃れのために違法行為を行い先延ばしすれば、最終的にはダメージはもっと大きくなり、そして致命傷になるのです。本書を読むとそれを痛感します。
ところで、本書の著者は、あの読売巨人軍にいて渡邉恒雄に反旗を翻した清武英利氏です。本を手にとってからプロフィールを見てあの清武氏であることを初めて気づいたのですが、そもそも新聞記者として有能な方だったということがわかるような本です。取材、執筆しながら、組織と個人のあり方について、自分と重ねながら書いたのだろうなと思わせる力作になっています。
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