『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』を読む
事業には、ツボみたいなものがあります。事業を行う人にとって、絶対外せないこと、もの。こだわりというかそれがないと価値がないというか。時には、ツボと儲かるネタのどちらを取るかというトレードオフに直面して、事業者は判断に大きく悩むことになります。
スターバックスを世界的なコーヒーチェーンに育てたハワード・シュルツにとって、スターバックスというのは、いいコーヒーの香りのする、人と人が出会う魅力的なお店です。それこそが、スターバックスの価値であり、事業のツボなのです。一番のツボは、いいコーヒーの香りのすること。
ところが、スターバックスを後任の経営者に任せると、売上に大きく貢献していたサンドイッチを作るときの焼けたチーズの匂いで、スターバックスはいいコーヒーの香りがしなくなっていました。それと同時に、スターバックスの業績に陰りが見えてきます。
ハワード・シュルツは、スターバックスのあるべき姿を取り戻すべく、スターバックスの経営者に返り咲くことを決め、改革を始めます。『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』は、ハワード・シュルツが、返り咲く前から、返り咲いたあと、さらに業績の悪化を経て後、回復するまでの物語です。
この本で参考にしたいことは、事業者が、売上を取るか、事業価値を取るかということを迷ったときにどう決断するかでしょう。事業価値に重きをおいているハワード・シュルツでさえ、サンドイッチ(売上)を取るか、いいコーヒーの香り(事業価値)を取るか、迷うのです。結論はわかりきっていますが、結果として、事業価値を取ります。
事業をやっていると、儲け話、儲かるネタというのは自分でも考えつくし、周りの人からいろいろと持ちかけられます。本当に儲かるかどうか、マユツバものが多いのですが、お金に弱い人になると、マユツバ儲け話にばかり飛びついて、いろいろなことに手を出し、結局、どれも実を結ばないということになったりします。
実際、私も、いろいろな経営者から、この儲かりそうな事業はどうかなという相談や話を聞かされることも多いのです。しかし、たくさんのビジネスに関わっている私でも、実際に、儲かるか、うまくいくかなどわかりません。まず、事業者が事業のツボをきちんとおさえているかがわかりませんし、事業の将来性を見通すのも難しく、さらに、事業者のノウハウや能力、やる気、継続できる力などもありますから、儲かるかもしれませんし、そうでもないかもしれません。
儲かるかどうかわかりませんが、事業をするのには、お金も時間もかかることは確かです。そして、失敗する可能性のほうが俄然高いものです。でも、チャレンジして失敗しても、自分が信じるものにかけてダメなら納得できるでしょう。単に儲かるからという理由で失敗したら・・・。
事業に失敗しても、大丈夫なように算段しておく必要がありますが、家族でもいればダメージを与えることになります。もし、子供がいて迷惑がかかっても、自分の信じるものにかけるなら、子供に「お父さんはな・・・」といって説明すれば、子供は納得してくれるかもしれません。でも、儲かる話に飛びついた悪い結果では、そうはいかないでしょう。ポイントは、特に大切な周りの人にきちんと説明できるかどうか。
そうはいっても、やはり売上と事業価値のトレードオフ問題は難しいものです。事業者ならずとも、会社員でも、突き当たる問題でしょう。そんなときに、どう対応、判断するか。その人の価値が試されるのです。
『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』は、そんなトレードオフ問題に突き当たったときのためにどうするか、ビジネスマンとしての姿勢や考え方を教えてくれる本になっています。
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