『妻と別れたい男たち』を読む
著者は、マーケティング誌『アクロス』の編集長を務め、以前は「マーケティングアナリスト」という肩書でした。しかし、この本の経歴紹介には「マーケティングアナリスト」という記述はありませんし、肩書もないので、どういう立場から書かれたのかというのが、わかりません。
「マーケティングアナリスト」という立場から書かれたにしては、主観的な判断が多いですし、社会調査にしては、調査データのサンプル数が少ないようです。
調査データを活用した社会評論というあたりが妥当かもしれません。
マーケティング調査と社会調査は、同じ調査という言葉がつきますし調査内容自体も似ています。一般の人ならあまり気になることはないでしょうが、調査データを頻繁にビジネスで使う私のようなプロからみると、実際は性質は大きく異なるものであり、どういう立場から本を書かれているかは、とても重要なことなのです。
簡単に説明すると、マーケティング調査は個別企業がある特定の目的を達成するために仮説を立てそれを検証するものであり、公的な性質の強い組織が社会の現状を知るのが社会調査です。中間的な立場に、マーケティング調査会社が実施するある業界などの範囲だけ使える調査があります。
ですから、調査データに基づく本書の場合、どういう立場から本を書いてるのか−「マーケティングアナリスト」なのか、社会評論家なのか、それとももっと違う立場から書いてるのか、とても気になるというか、前提としてチェックしておく必要があるのです。
著者は、今は「マーケティングアナリスト」という肩書から離れているようですから、社会評論と考えるのが妥当なのでしょうが、肩書は明確にしてほしいところです。
ちょっと前置きが長くなりましたが、著者の最近の本を読むとき、いつも気になってしまう問題なので、触れておきました。
本書ですが、非婚化、離婚が増え、孤立化が進む中高年男性の現状について分析した本です。主に、「離婚願望ない」「離婚願望強い」「離婚願望弱い」「すでに離婚」という層に分けて、その傾向を述べています。
印象的だったのは、家事が得意な男性のほうが、離婚願望が強かったり、すでに離婚しているということです。家事ができる男性は、離婚しても困らないからという、当然の理由ですが、妻が希望する夫への家事協力は、離婚に結びつきやすいとは、皮肉なものです。
で、著者のまとめとしては、以下の文章だと思われます。
「離婚願望が強い男性や離婚した男性のほうが、新しい柔軟な価値観を持っているように私には思えるのである。その価値観は、人間を、仕事、業績、所得、地位などによって測る男性原理社会から開放しようとしているのである」
いろいろなメディアでもいわれていますが、サービス社会が進展し、「男性不況」という状況に追い込まれているオトコたち。オトコが男性原理社会からの開放というか、離脱していくのは、必然の流れなのかもしれません。
新しい価値観、生き方、仕事のやり方、女性との付き合い方が求められるオトコは、転換期にきているといえそうです。
★★★☆☆
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