企業が提供するコミュニティとはどんなもので、
そこではどんなことが起こり、
また、マーケティング空間としてとらえたときに、
どんな視点から取り組み、
どんな成果が期待できるかまで教えてくれる。
その出発点は、ガーラ自社サイトのガーラフレンドでの、
リアル会議でのユーザーとのやりとりの経験であり、
そこから、実際に手がけた企業の事例から得た
ノウハウが加わっていく。
とくに、コミュニティから生まれる
マーケティングデータとしてのその価値を、
従来のアンケートやグルインなどの手法では
捕捉できないような「生声」として抽出して、
かつてない結果を導き出すそのやり方は見事でさえある。
コミュニティの構築に関しても、
そのプロセスは、専門家としての力量を示している。
このようなコミュニティは、
インターネット時代における
より能動的になった生活者と、
企業が関係を築いていくためのものである。
つまり、顧客と企業との関係の変化の中で、
コミュニティの意義が高まっているという基本的認識がある。
そして、最後のほうで、
コニュニティを成功に導くのは、顧客への「愛」である、
と述べられる。
これは、この本の副題にもなっている、
「コラボレーティブ・マーケティング」のことである。
1つだけ問題点を指摘するならば、
荒れるコミュニティについての考察である。
この本では、ユーザーの自主性を尊重しつつも、
コミュニティが荒れないようするには、
言葉のルールなどを確立する大切さが述べられている。
しかし、最近の荒れないコミュニティを見ていると、
ルールよりも、人と人をどのようにつなぐかのしくみが、
荒れる、荒れないの状況に大きく関わっていることがわかる。
これは、実はリアル社会のしくみと同じことで、
自分のポジション=価値が明確な場所では、
ポジションが明確であることによって、
その人に理性や責任が生じるのである。
このような場所では、荒れることは少ない。
2チャンのようなスレッド型掲示板スタイルでは、
人としてのポジション=価値がないので、
加速度的に感情だけがエスカレートして荒れていくのである。
この本では、プロフィール情報の提供が重要であることも
述べられてはいるものの、
人のつながり方の重要性までは言及されてはいない。
このコミュニティノウハウは、この本が出版された以降の、
実際のコミュニティが生み出した成果であろう。
しかし、この本全体としてみれば、企業コミュニティに関して、
とてもわかりやすく、また実践的に書いてあり、
完成度も高く、コミュニティに興味のある人であれば、
必読の書であるといえる。
★5つ ★★★★★
« Hide it