『吉野家の経済学』安部修仁、伊藤元重著を読む
今だ販売停止にある吉野家の牛丼だが、
牛肉輸入禁止前の、
吉野家社長の安部修仁と経済学者の伊藤元重の対談による、
280円牛丼にまつわる、詳細なビジネスストーリーである。
この本を読めば、普段、パッと行って、パッと食べて、
ポケットから小銭を出して終わってしまう牛丼も、
これからは、いろいろなことを想像しながら食べられる。
そんな、紅しょうがや七味や卵だけではない、
牛丼のトッピングになっている本である。
この本の中には、紹介したい話がいっぱいある。
例えば、280円という価格設定をしたときの話。
価格設定を行う前に、割引セールということで、
300円、290円、280円、270円という10円きざみで
テストマーケティングを行い、
どの価格だと、現在価格の400円に対して、
売上がどのくらい伸びるかという実験をしている。
そうすると、300円と290円だと大きく違うが、
280円と270円では違わない、という結果が出たりする。
ユーザーのほうでも、
10円という違いは知っているはずなのに、
300円と290円の10円の違いは、
280円と270円のそれに比較しても
心理的にかなり違うものになっているのだ。
280円という価格設定は、
このように、実験され、考えられた結果なのである。
そして、この280円という価格は、
実は価格の問題だけでないことも明かされる。
この280円という価格を実現するためには、
業務改革はもちろん、硬直化してしまった
社員全員の意識改革が目的であったことなどが述べられる。
そのほか、吉野家の店舗設計の話、
吉野家の歴史、そして倒産したときの経緯など、
いろいろな話が出てくる。
言うならば、まさに「特盛」の本で、
「卵」「サラダ」「お新香」「味噌汁」つきの
フルメニューになっているのである。
この本1冊読めば、吉野家食べ尽くしである。
★4つ ★★★★☆
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