出かけて、打ち合わせをいたしますと、Webからの問い合わせや成約件数が落ちているということです。そして、Web展開について話が進んでいくのですが、Web責任者は、Webの展開コンセプトについて、「ラクをしたい人のための家事サービス」ということを、あるときぱっとひらめき、このコンセプトに基づき、展開していたというのです。
Web責任者は、このコンセプトはかなりよいと思っているようで、自信たっぷりで、思い入れがあるように語っていたので、一瞬、私は言おうかどうか迷ったのですが、コンセプトがよくなければ、コンサルを提供しても貢献できないと思い、思い切って言うことにしました。「そのコンセプトは再考したほうがよいですよ」と。
なぜなら、富裕者=「ラクをしたい」人たちではないからです。ラクをしたいかしたくないかというレベルで考えるなら、むしろ、「ラクをしたい人」ではないでしょう。ラクをして富裕者になったのではなく、ラクをしないから富裕者になったのではないでしょうか。
そもそも、ラクかどうかなんて関係なく、自分のビジネスへの情熱やこだわりがあったから富裕者になれた、ととらえるほうが順当です。ラクをして富裕者になれた人はいるかもしれませんが、あくまでも少数派ととらえるべきです。
つまり、「ラクをしたい」というコンセプトは、富裕層にはささらない、見当違いなのです。きちんと富裕者向けに訴求するなら、「もっと自分の時間を有効に使いたい方へ」とか、あるいは、最高の家事サービスを提供するという原点に立ち戻って、「家事のプロがあなたの家を最高にきれいにする」とかです。
「ラクをしたい」というコンセプトに、なぜ、Web責任者がこだわるか。私の推測では、そのWeb責任者が「ラクをしたい」人だからです。自分がそう思っているのだから、富裕者もそう思っているに違いない、だからこのコンセプトはよい、と。
一言でいえば、マーケティング発想がないということなのですが、マーケティング経験も少ないのかもしれません。それなら、きちんとターゲットとなる富裕者層の求めているものを調査する必要があるのですが、マーケティングについての見識がないと、その発想自体ができないのでしょう。
あと、富裕者層向けビジネスをやろうと思う人と「ラクをしたい」発想は、多少関係があるのではないかと私は思っています。富裕者層向けビジネスは、一頃より話題に上ることが少なくなりましたが、少し前までは結構ありまして、私もよく相談を受けました。
そうした中で、共通して感じたのは、富裕者層向けビジネスを安易に考えて行おうという人が多いということです。つまり、金を持っている人から、金を取ろうということだけなのです。発想としては、あり得ますが、ただ、それだけなんですね。富裕者層というのはどういう人たちで、何を求めているかという部分が弱いのです。「ラクをしたい」発想は、このような安易さからも出ていると考えられます。
ともあれ、コンセプトがずれていれば、ビジネスはうまくいきません。Webコンテンツ、プロモーション、キャッチコピーなどは、コンセプトに基づき、展開されるものです。根本のところ、出発点が間違っていれば、やることすべてが、見当違いなものになってしまいます。
売上が落ちている、問い合わせが少ないなどの問題を解決するなら、問題点の場所を的確に見抜き、改善、改良、修正する必要があります。それが、コンセプトレベルで問題があるなら、かなり大がかりな作業になりますが、それをやらなければ、業績アップは望めません。コンセプトは、それほど重要なことです。家事サービスがうまくいかないのは、コンセプトなのです。
コンセプトは、ビジネスの顧客となる相手に、どういう価値を提供するかです。仮説を立て、できる限り調査を行い、ターゲットにきちんとささるコンセプトを策定しないといけません。
富裕者に限らず、年齢、性別など人口統計学的な分類であるデモグラフィック、心理学的な分類のサイコグラフィックやライフスタイル、B2CやB2Bなど、顧客層を分類する基準はいろいろあります。その中で、目指す顧客層に向けて、最適なメディアを通して、的確なメッセージを発信すること。その中心にあるのがコンセプトといえるでしょう。
コンセプトの重要性は、ビジネスの規模、商品のライフサイクルや競争地位、リアルネットに関わらず、変わりありません。新規ビジネスはもちろん、既存ビジネスでも、顧客層に目を向け、コンセプトを変えていくことが必要なこともあります。
私どもでは、コンセプトをしっかり考えるビジネスのお手伝いをいたします。新規事業立ち上げのための事業企画、コンセプトをしっかり考えるビジネスの営業企画、販売拡大のための販促企画などについて、企画面でサポートしてほしい、企画書・提案書を作成代行してほしいなどがありましたら、ご相談ください。
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