それは“なぜ”なのか、理由がわかることで、見えてくることがある。あたりまえと思っていることでも、“なぜ”当たり前なのかはわからないことがある。そんな“なぜ”を、日常の世界から探し、考えることで、企画や企画書づくりのヒントにしようというのが、このシリーズの趣旨。
しかし、この、“なぜ”のその探究には、著者なりの主観や直観、推測、憶測、感覚、本能、そして何よりも企画マンとしての資質が含まれている。なので、読者の方は、ここに書かれていることを簡単に信じないで、自分なりにとらえ、解釈、思考、分析してから、自分の意見として採用するように。
企画を強化するためである。
<見方>
戸田覚氏の著書『あのヒット商品のナマ企画書が見たい!』は、ヒット商品の企画書を苦労して集めた興味をひかれる内容になっているが、収容された企画書は、見栄えがしないものが多く、中にはメモ書き程度のものさえある。
こういう企画書を見ていると、そういうものだなという妙な納得感があるものだ。優れたアイデアは、だれかに示せれば企画書の要は足りる。くどくど説明したり、資料を駆使して必然性を高めたりすることは、優れたアイデアには必要ないのである、という説得力があるからだ。
こういう本を読まずとも、企画書とは、そもそもビジネスをやるためのものであり、見栄えなどはどうでもよく、その中身が大切であるという考えは根強いものがある。実際、ある意味その通りだとも思う。
しかしである。はたしてそうであろうか? という疑問は当然投げかけてもよい。
企画書を2つに分ける分け方の1つに、用紙のスペースが全部埋まっているか、それとも用紙のスペースがあいているか、という見方がある。あるデザインの本に、プロのデザインはあきスペースの使い方が違うというのがあったが、企画書についてもそれは言えるのである。
企画書を作るプロセスから考えるなら、最初はぱっと企画書を作っていくものである。このときは、自分がビジネスをどう説明するかというストーリーに沿って企画書を書いていく。いわば、メインストリートである。ページの見え方からすれば、あきスペースだらけであるが、でも必要なことは説明しているという状態である。
メインストリートができたら、全体をイメージしながら細部のツメをしていく。サブストリートの作業である。この細部のツメをしていくときに活用できるのが、あきスペースである。つまり、今書いてあることを、さらに詳しく説明したり、そこにもっていく背景や条件を加えたり、さらに関連すること、対立することなどを連想し、書きこむために使用する。
つまり、あきスペースというのは、埋めるべきスペースなのである。これをやっていると、企画がより練れてくる。ビジネスのエッセンスが強化されて、よりよいビジネスができる可能性が広がる。企画書がビジネスを強化するのである。
あきスペースを埋めるのは、企画をレベルアップし、自らの企画力を高め、プロらしい企画書にすることなのである。
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