今でも『人間豹』や『時計台の秘密』
がおもしろかったのを覚えている。
それ以来、私は読書にはまってしまった。
話は、今に戻って、
今週、風邪を引いてしまい
寝込んでしまった。
しかし、寝床でビジネス書を読む気にならず、
取り出したのが、10年以上前に買ったまま
読まずに書棚の奥に押し込まれていた本書である。
江戸川乱歩の初期〜戦後までの間に生み出された
代表的な12の短編を集めている。
読み始めると、
すぐにはまってしまった。
30年を経ても、この感覚は変わらないということか。
ただ、小説は、ジュンルに限らず、
人をどう見ているかが基本的な視点になることが
昔と違うところか?
江戸川乱歩の小説に出てくる人は、
不気味で、変で、執着していて、
美しく、妖しく、得体の知れない人たちである。
それが、読む人の興味をそそらずにおかないのだが、
さらに、そこに出てくる小道具に特徴がある。
まず、双眼鏡が多い。
本書に収められているいくつもの短編に、
双眼鏡で観察し、探し、のぞき、楽しむシーンが出てくる。
双眼鏡をのぞくことで、
今までと違う世界が現れるのだ。
そして、事件をも双眼鏡で目撃する。
そのほか、顕微鏡や鏡なども出てくる。
これらの小道具の使われた方を読んでいると、
ヒッチコックやブルースリーの映画、
はては、あの伝説的な映画批評雑誌「リュミエール」
の創刊号の蓮実重彦の巻頭特集「鏡の誘惑」まで、
思い出してしまう。
これほど、
ここに書かれた推理小説の仕掛けが、
あちこちで生きていたのか、
というか共鳴していることに、
まさに驚きを感じる。
ここでいきなり視点を変えて、
顧客視点を大切にするという、
マーケティング的な観点から犯人を見ると、
犯人像というのは、きわめて単純な像になる。
犯人は必ず、自我にこだわり、
自分の欲望、欲求を満たそうとする我儘な人たちであり、
それを正当なやり方ではなく屈折したやり方で克服しようとする、
他者がどうなるかなど一顧だにしない人なんである。
そのことが、推理小説の中の人間像に
ある限界を露呈する。
マーケティングの推理小説に関する優位点は、
こんなことにあったのだ。
内容的には、
「パノラマ島奇談」の島の描写が冗長な感じがしたが、
あとは、不気味におもしろく読める、と思う。
(ただ、この手の本は、好き嫌いがあるでしょう)
#読書時間 4時間
★4つ ★★★★☆
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